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People 社員コラム 海洋建設の工法・技術

海洋建設の要!ウィンチの仕組みや種類と活用

海洋建設の現場で、重い資材の引き上げや精密な位置調整に欠かせない「ウィンチ」。その重要性を深く理解されている方は、意外と少ないのではないでしょうか?

このブログでは、海洋建設におけるウィンチの基本的な仕組みから、電動や油圧といった種類や潜水作業での具体的な活用事例、さらには操作に必要な資格まで、詳しくまとめました。

ウィンチとは?基本の仕組みと役割

ウィンチってそもそも何?

ウィンチとは、ワイヤーロープやチェーンを巻き取るためのドラムを備え、重い荷物を吊り上げたり水平に牽引したり、位置を固定したりするために使用される巻上装置のことです。

その強力な巻き上げ能力と精密な制御性から、建設現場や海洋建設の分野では、欠かせない存在となっています。

仕組みはシンプルで、モーターやエンジンなどの動力源から得られた力を減速機で増幅し、ドラムを回転させることでワイヤーロープを巻き取ります。

そのため、人力では動かせないような巨大な構造物や資材を、安全かつ効率的に扱うことができるようになります。ウインチは、ただ物を動かすだけでなく、その位置を正確に調整し、保持する役割も担っており、多岐にわたる作業の基盤を支えています

ウィンチの種類と役割

ウィンチは、その駆動方式によっていくつかの主要な種類に分けられ、それぞれが海洋建設の様々な場面で特有の役割を果たしています。
主な種類とその特徴、海洋建設における役割を以下の表にまとめました。

※ウィンチの種類についての詳細は「ウィンチの種類と運転業務特別教育について」も併せてご覧ください。

種類 特徴 海洋建設における主な役割
電動ウィンチ 電気モーターで駆動し、汎用性が高く、比較的静かで精密な操作が可能
電源があればどこでも使用でき、遠隔操作にも対応しやすい利点がある。
小型から中型の資材の吊り上げ・運搬、仮設構造物の設置、潜水作業におけるロープ管理、小型船舶の係留・引き上げなど、幅広い用途で利用可能
手動ウィンチ 人力でハンドルを回してワイヤーを巻き取るため、電源や油圧源が不要
小型で持ち運びやすく、非常時や補助的な作業に用いられる。
緊急時の資材の引き上げ、小型機材の移動、設備の微調整、あるいは電源が確保できない場所での補助作業などに利用される。
油圧ウィンチ 油圧ポンプの力で駆動し、非常に大きな牽引力と安定した連続稼働が可能
過負荷にも強く、重量物の扱いに適している。
ケーソンや大型浮体構造物の据付・位置調整、大型船舶の牽引・係留、海底ケーブルの敷設、大規模な揚重作業など、重作業の主役として活躍。

引き上げ・移動の要としての重要性

海洋建設においてウィンチは、単なる機械ではなく、作業の安全性と効率性を確保するための「要」として極めて重要な役割を担っています。

海上という特殊な環境下では、波の揺れ、潮の流れ、風といった自然条件が常に作業に影響を与えます。このような状況下で、ウィンチは重量物の吊り上げ、構造物の正確な位置調整、資材の安全な運搬、そして作業員の安全確保に至るまで、多岐にわたる場面でその能力を発揮します。

中でも、ケーソンや大型浮体構造物の据付といった大規模な工事では、ミリ単位の精密な位置調整が求められます。ウインチの強力な牽引力と繊細な制御性がなければ、これらの複雑な作業を安全かつ計画通りに進めることは困難です。

また、潜水作業においては、潜水士の生命線となるロープの管理や、海底に沈んだ機材の回収など、安全確保の面でもウィンチの存在は欠かせません

このように、ウィンチは海洋建設のあらゆるフェーズにおいて、その基盤を支える重要な存在なのです。

海洋建設でウインチが活躍する場面とは?

海洋建設の現場において、ウィンチは単に重量物を引き上げるだけでなく、高精度な位置調整や作業員の安全確保、さらには他の重機との連携を支える多岐にわたる重要な役割を担っております。

陸上とは異なる厳しい海洋環境下で、ウィンチはその強靭なパワーと精密な制御能力を発揮し、様々な工事の成功に欠かせない存在となっています。

ケーソン据付、浮体構造物の位置調整

海洋建設における基礎工事では、大型の構造物を正確な位置に設置することが極めて重要になります。ウィンチは、この精密な作業において中心的な役割を果たします。

活躍場面 ウィンチの主な役割 具体的な作業例
ケーソン据付 大型構造物の精密な位置決めと沈設 防波堤や橋脚基礎のケーソンを、潮汐・潮流・風の影響下で正確に据え付ける
浮体構造物の位置調整 係留索の張力調整と安定保持 洋上風力発電設備や浮体桟橋のアンカー設置・回収、位置の微調整を行う

潜水作業の安全確保(ロープ管理)

海洋建設現場における潜水作業は、水中という特殊な環境で行われるため、潜水士の安全確保と資機材の円滑な運搬が極めて重要です。ウィンチは、これらの作業において不可欠な安全管理ツールとして機能します。

資機材の搬送

水中での作業には、水中ポンプや溶接機、切断機など、様々な資機材が必要となります。これらの重量のある資機材を水中に安全に吊り下ろし、あるいは水中から引き上げる際にもウィンチが活躍します。

精密な操作により、資機材を目的の場所へ正確に降ろして作業効率と安全性を高めたり、作業中に資機材が流されないよう、ロープのテンションを維持する役割も担います。

基礎捨石均し

防波堤築造工事などでよく行われる基礎捨石均し作業でのウインチ操作。基本海底面は凹凸があるためケーソンを設置する前に砕石を敷き詰め平にします。
その砕石を潜水士が均す際に人力では石の運搬が困難な場合、船舶に取付られたウインチを使用し石を運搬し平らに均します。
潜水士による石均し作業を行う為にはウインチは必須の機材になります。

港湾工事・吊り足場作業・クレーン補助との連携

ウィンチは、大規模な港湾工事から高所での繊細な作業や、他の重機の能力を補完する役割まで、幅広い場面でその力を発揮します。

港湾工事におけるウインチの活用

港湾工事では、岸壁や防波堤、桟橋といった構造物の建設や補修が日々行われています。ウィンチは、鋼矢板(シートパイル)の打ち込みや引き抜き作業の補助、大型の部材や資材の揚重・運搬に用いられます。

特に、クレーンが直接アクセスしにくい場所や、より繊細な引き寄せ・位置決めが必要な場面で、その機動性と精密性で作業を強力に支援します。

吊り足場作業

橋梁や高所にある構造物の点検、補修、塗装といった作業では、作業員が安全に作業を行うための吊り足場が設置されます。ウィンチは、この吊り足場の昇降や固定、さらには作業に必要な資材の吊り上げ・吊り下ろしに用いられ、作業員の安全確保と効率的な作業環境の構築に役立ちます。

高所での作業は危険を伴うため、ウィンチによる安定したロープ管理が極めて重要になります。

クレーン補助との連携

クレーンは重量物の揚重において主役ですが、ウィンチはクレーン単独では難しい、より精密な操作や多方向からの張力を必要とする場面で、その能力を補完します。

例えば、大型部材の反転作業や狭い場所での姿勢制御、あるいは複数のクレーンと連携して超大型構造物を吊り上げる際のバランス調整など、ウィンチはクレーン作業の安全性と効率性を飛躍的に向上させるための重要な補助ツールとして機能します。

ウィンチの種類とそれぞれの特徴

海洋建設の現場で活躍するウインチは、その駆動方式によって大きく分類されます。それぞれのウィンチには異なる特性があり、作業内容や規模に応じて最適なタイプが選ばれます。

ここでは、特に主要な「電動ウィンチ」と「油圧ウィンチ」について、その特徴をご紹介いたします。

電動ウィンチ:汎用性と操作性

電動ウィンチは、電気モーターを動力源としてワイヤーロープを巻き上げるウィンチです。その最大の特長は、「電源さえあればどこでも使用できる汎用性の高さ」と、比較的「容易な操作性」にあります。

電動ウィンチの主な特徴

  • 電源の確保が容易: 船舶の電源や陸上からの供給など、電気さえあれば稼働可能。
  • 操作のしやすさ: スイッチ操作やリモートコントロールによって、誰でも比較的簡単に操作が可能。
  • 速度調整の柔軟性: インバーター制御などにより、繊細な速度調整が可能なモデルも多く存在する。
  • 環境負荷の低減: 排気ガスを出さないため、環境への配慮が求められる現場や閉鎖空間での使用に適している。
  • 導入コスト: 油圧式と比較して、初期導入コストを抑えられる傾向にある。

油圧ウインチ:重作業向け・連続稼働に強み

油圧ウィンチは、油圧ポンプの力で油圧モーターを駆動させ、ワイヤーロープを巻き上げるウインチです。その最大の強みは、「非常に大きな牽引力」と優れた「耐久性」、そして過酷な条件下での「連続稼働能力」にあります。

油圧ウインチの主な特徴

  • 圧倒的な牽引力・巻上力: 油圧の力を利用するため、電動ウインチでは対応が難しい重量物の揚重や牽引が可能。
  • 優れた耐久性と信頼性: 過酷な使用環境や長時間の連続運転にも耐えうる堅牢な構造。
  • 精密な速度・トルク制御: 油圧システムにより、負荷変動に強く、非常に滑らかで精密な速度およびトルク制御が可能。
  • 過負荷への強さ: 万が一過負荷がかかった場合でも、油圧システムが自動的に調整するため、機器の損傷リスクを低減できる。

ウィンチの操作に必要なスキルや資格

海洋建設の現場におけるウィンチ操作は、単に機械を動かすだけでなく、海の特性を理解し、安全かつ効率的に作業を進めるための専門的な知識と技術が不可欠です。

そこで、ウィンチ操作に関連して取得が推奨される資格や、現場での技術習得の重要性についてご紹介いたします。

取得が推奨される主な資格・講習

ウィンチ操作そのものに特化した国家資格は少ないものの、その周辺作業や、ウィンチが組み込まれた機械の操作には、労働安全衛生法に基づく様々な資格や技能講習が必要となります。これらの資格は、作業の安全性を確保し、事故を未然に防ぐために極めて重要になります。

動力により駆動される巻上げ機(電気ホイスト、エヤーホイスト及びこれら以外の巻上げ機でゴンドラに係るものを除く。)の運転の業務

受講資格
満18才以上

巻上げ機運転特別教育

学科
巻上げ機に関する知識 3時間
巻上げ機の運転に必要な一般的事項に関する知識 2時間
関係法令 1時間
学科合計 最低6時間以上
実技
巻上げ機の運転 3時間
荷掛け及び合図 1時間
実技合計 最低4時間以上

玉掛け技能講習

ウィンチを用いて荷を吊り上げる作業において、荷をワイヤーロープなどで適切に吊るす「玉掛け」は、最も基本的ながら極めて重要な作業です。
吊り上げ荷重が1トン以上のクレーン、移動式クレーン、デリック、揚貨装置の玉掛け作業を行うには、玉掛け技能講習の修了が義務付けられています。

海洋建設現場では、巨大なケーソンや浮体構造物、各種資材など、大型で重量のあるものを扱うことが多いため、ウインチ作業に携わる者にとっては必須資格と言えるでしょう。

小型移動式クレーン運転技能講習 / 移動式クレーン運転士免許

ウィンチが移動式クレーンに搭載されており、そのクレーン全体を操作する場合、以下の資格が必要となります。

講習・免許名 対象クレーン 必要となる主な作業
小型移動式クレーン運転技能講習 吊り上げ荷重5トン未満の移動式クレーン ウィンチを搭載した小型移動式クレーンでの荷の吊り上げ・移動作業
移動式クレーン運転士免許 吊り上げ荷重5トン以上の移動式クレーン 大型クレーンに搭載されたウィンチを含む、あらゆる吊り上げ・移動作業

玉掛け技能講習と小型移動式クレーンについては「小型移動式クレーンと玉掛けとは?技能講習について紹介」をご覧ください。

まとめ:ウィンチの技術で海の現場を支える

海洋建設の現場において、ウィンチは単なる機械ではありません。それは、巨大な構造物を正確に動かし、危険な水中作業を安全に進めるための、まさに「生命線」とも言える存在です。

今回は、ウィンチの基本的な仕組みから、ケーソン据付や潜水作業における具体的な活用場面、さらには電動や油圧といった多様な種類、そして安全に操作を行う上で必須となる資格やスキルまで、網羅的にご紹介いたしました。

ウィンチがなければ、現代の複雑かつ大規模な海洋構造物の建設は、その安全性と効率性を大きく損なうことになりかねません。つまり、ウィンチは海洋建設における基幹技術と言えます。

今後も海洋建設のニーズは高まり、より大規模で複雑なプロジェクトが増えることが予想されます。そうした中、ウィンチの技術はさらなる進化を遂げ、高精度化や自動化が進むことで、作業の安全性と効率性を一層向上させていくことでしょう。

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